人は生まれながらにして主体性を備えているのに、
大人が手をかけ過ぎることで主体性が失われていく。
生まれたばかりの赤ちゃんは、自らの欲求に忠実に、泣いたり笑ったり、手を伸ばしたりと、まさに主体性の塊のように見えます。
大人が良かれと思って手をかけ過ぎることで、子どもは自分で考えたり、試したりする機会を奪われ、言われたことをこなすことに慣れてしまうのかもしれません。
主体性を育むためには、大人は見守る勇気を持ち、子どもが自分で気づき、行動することを促すことが大切なのかもしれません。時には失敗も経験させながら、その中で学びを得ていくことが、真の主体性を育む上で不可欠なのかもしれません。
子どもの主体性はゼロから育てるものではない
生まれたばかりの赤ちゃんを見てもわかるように、彼らは自らの欲求に正直で、興味のあるものに手を伸ばし、不快なことは泣いて訴えます。
これは、主体性の根源となる「自分で何かをしたい」「自分の意思を表現したい」というエネルギーが、すでに備わっている証拠と言えるでしょう。
大人の役割は、この内なる主体性の芽を摘み取ってしまうのではなく、むしろ、その芽が健やかに育つための肥沃な土壌と、温かい日差し、そして適度な水分を与えることなのだと思います。
・安全な環境を提供する: 子どもが安心して自分の興味を探求し、試行錯誤できるような心理的な安全性と物理的な安全性を確保する。
・好奇心を刺激する: 様々な経験や情報を提供し、子どもの「なぜ?」「どうして?」という探求心を刺激する。
・挑戦する機会を与える: 少し背伸びが必要な課題や、自分で解決できる程度の困難を与えることで、主体的に取り組む力を養う。
・成功体験を積み重ねる: 小さなことでも、自分でやり遂げた経験を認め、褒めることで、自信と意欲を高める。
これらの関わりを通して、子どもは本来持っている主体性を開花させ、自ら成長していく力を獲得していくのではないでしょうか。
大人が何でも決めてしまうのではなく、
子どもの自己決定を促すことが大切。
子どもの自己決定を促すことは、主体性を育む上で非常に重要です。大人が先回りして何でも決めてしまうと、子どもは自分で考え、判断する機会を失い、指示待ちの姿勢になってしまう可能性があります。
自己決定を促すためには、例えば以下のような関わり方が考えられます。
・小さな選択肢を与える: 服を選ぶ、遊ぶおもちゃを選ぶ、今日の夕食のメニューについて意見を聞くなど、日常の些細な場面で子どもに選択の機会を与える。
・子どもの意見を尊重する: 子どもの突飛なアイデアや意見に対しても、頭ごなしに否定するのではなく、「そう思ったんだね」「面白い考えだね」と受け止め、対話する。
・子ども自身に考えさせる問いかけをする: 「どうしたらできるかな?」「どうしたいの?」といった問いかけを通して、子どもが自分で解決策を見つけたり、自分の気持ちに気づいたりするのを促す。
・結果を子ども自身に経験させる: 良い結果も悪い結果も、子どもの行動の結果として受け止めさせることが大切。失敗から学ぶことも多いはずです。
・プロセスを褒める: 結果だけでなく、子どもが考え、試行錯誤する過程を認め、褒めることで、挑戦する意欲を引き出す。
これらの積み重ねを通して、子どもは「自分で決めることができる」「自分の考えは尊重される」という感覚を育み、主体的に行動する力を身につけていくのではないでしょうか。
子どもに手をかければかけるほど、子どもは自立できなくなり、自分がうまくいかないことを誰かのせいにするようになる。
大人が手をかけ過ぎることで、子どもは自分で困難を乗り越える経験が不足し、「自分にはできない」「誰かに助けてもらわないと」という依存心を抱きやすくなるのかもしれません。
そして、何か問題が起きた際に、自分の行動を振り返るよりも先に、「親がこうしてくれなかったから」「先生がちゃんと教えてくれなかったから」と、他者のせいにすることで、自分の責任から逃避してしまう傾向も考えられます。
自立心を育むためには、子どもが自分の力で考え、行動し、その結果を受け止める経験を積み重ねることが不可欠です。時には失敗を通して、原因を分析し、改善策を見つけ出す力を養うことも大切でしょう。
親としては、子どもが困っている姿を見るのは辛いものですが、ぐっと堪えて見守り、本当に助けが必要な時だけ、最小限の援助に留めることが、子どもの自立を促す上で重要なポイントなのかもしれませんね。
子ども自身で考えれば、自己決定の経験を重ねることで、当事者意識が高まっていくのではないか。
子ども自身で考え、決めるという経験を積み重ねることで、「これは自分で決めたことだ」という当事者意識が育まれていくでしょう。
当事者意識が高まると、物事を他人事として捉えるのではなく、自分自身の問題として捉え、積極的に関わろうとする姿勢が生まれます。成功体験はもちろんのこと、たとえ失敗したとしても、「自分で決めたことだから」と、その結果を真摯に受け止め、次に活かそうとする意欲につながるはずです。
例えるなら、誰かに言われて仕方なくやるのではなく、自分で選んで始めた趣味やプロジェクトには、自然と情熱が湧き、積極的に取り組むのと同じかもしれません。
子どもが主体的に考え、自己決定を重ねることで、以下のような好循環が生まれるのではないでしょうか。
・自己肯定感の向上: 自分で決めたことがうまくいった経験は、「自分にはできる」という自信につながります。
・責任感の醸成: 自分で決めたことに対して、最後までやり遂げようとする責任感が育まれます。
・問題解決能力の向上: 自分で考え、試行錯誤する中で、困難を乗り越える力が養われます。
・学習意欲の向上: 自ら興味を持って取り組むことで、学ぶことの楽しさを知り、探求心が深まります。
大人は、子どもが安心して自己決定できる環境を整え、その過程を温かく見守ることが大切です。
時には、適切な情報やヒントを与えながらも、最終的な判断は子ども自身に委ねることが、当事者意識を高める上で重要なポイントになるでしょう。
柔道少年団で子どもの自主性を育てるために
柔道少年団で子どもの自主性を育むことは、技術の向上だけでなく、将来にわたって主体的に行動できる人間形成にも繋がる、非常に意義深い取り組みです。
柔道という武道は、礼儀作法や相手への尊重といった精神的な側面も重要視されるため、自主性を育む上で良い土壌を持っていると言えるかもしれません。その上で、さらに自主性を引き出すために、以下のようなアプローチを行っています。
練習における工夫:
目標設定への参加: 練習や試合に向けて、子ども自身が目標を設定する機会を設ける。「今日はこの技を3回成功させる」「次の試合で一つでも新しい技を試す」など、小さな目標でも良いので、自分で決める経験を積ませる。
練習メニューへの意見交換: 指導者が一方的にメニューを決めるのではなく、「今日はどんな練習をしたいか」「この練習を取り入れてみてはどうだろうか」と、子どもたちの意見を聞く時間を作る。
自主練習の推奨とサポート: 指導された練習以外にも、各自が課題を見つけて自主的に練習する時間を設け、その内容について相談に乗ったり、アドバイスをしたりする。
教え合いの促進: 上級生が下級生に教える機会を作ることで、教える側も理解を深め、主体的に関わる意識を高める。また、子ども同士で技術やコツを共有することで、自ら考え、学ぶ姿勢を育む。
振り返りの習慣化: 練習後や試合後に、各自が今日の練習や試合を振り返り、良かった点や改善点などを言葉にする時間を作る。
指導者の姿勢:
指示命令型からの脱却: 一方的な指示や命令ではなく、「どう思う?」「どうしたら良いかな?」と問いかけ、子ども自身の考えを引き出すことを意識する。
見守る姿勢: 子どもたちが自分で考え、行動する時間を与える。すぐに手助けするのではなく、困っている様子を見守り、本当に助けが必要な時にだけサポートする。
成功体験を積ませる: 小さな成功体験でもしっかりと認め、褒めることで、自信と意欲を高める。
失敗を成長の機会と捉える: 失敗を頭ごなしに叱るのではなく、「次はどうすれば良いか」を一緒に考え、挑戦する心を育む。
個性を尊重する: 一人ひとりの個性や考え方を尊重し、画一的な指導ではなく、それぞれの特性に合わせた関わり方を心がける。
これらの工夫を通じて、柔道少年団は、技術だけでなく、子どもたちが自ら考え、行動する力を育む場となり、そして柔道を通して培われた自主性は、彼らが将来、様々な場面で主体的に活躍するための大きな力となると考えます。
子どもの自主性を育てるために、
親に対して意識して取り組んでもらいたいこと
柔道少年団のお子さんの自主性を育むためには、親御さんのご理解と協力が不可欠です。親御さんの意識が変わることで、子どもたちはより安心して主体的に柔道に取り組むことができるでしょう。以下に、親御さんに意識して取り組んでいただきたいことをいくつか提案します。
家庭での関わり方:
子どもの意見を尊重する
柔道の練習や試合について、結果だけでなく、子どもがどのように考え、何を感じたのかをじっくりと聞く時間を持ちましょう。「今日の練習はどうだった?」「試合でどんなことを考えた?」など、子どもの言葉に耳を傾け、頭ごなしに否定したり、自分の意見を押し付けたりしないように心がけてください。
自主的な取り組みを応援する
練習以外に、子どもが自主的に体力トレーニングをしたり、技の研究をしたりする様子が見られたら、積極的に励まし、サポートしてあげてください。例えば、トレーニングに必要な道具を用意したり、一緒にビデオを見て研究したりするのも良いでしょう。
目標設定をサポートする
子どもが自分で目標を立てるのを促し、その目標に向かって努力する過程を応援してください。目標達成のプレッシャーをかけ過ぎず、「頑張っているね」「すごいね」と、努力そのものを認める言葉をかけてあげることが大切です。
結果よりもプロセスを褒める
試合の結果に一喜一憂するのではなく、練習で頑張ったこと、試合で挑戦したことなど、プロセスを具体的に褒めてあげてください。「あの技に挑戦したのは勇気があったね」「諦めずに最後まで頑張ったね」といった言葉は、子どもの自信と主体性を育みます。
失敗を受け止める姿勢を見せる
試合で負けたり、目標を達成できなかったりした時、感情的に責めるのではなく、「次はどうしたら良いか一緒に考えよう」と、前向きな言葉をかけてあげてください。親御さんが失敗を恐れない姿勢を見せることで、子どもも安心して挑戦できるようになります。
柔道以外の興味も尊重する
柔道だけでなく、子どもが持つ他の興味や関心も大切にしてください。様々な経験を通して、子どもは多角的な視点や主体性を育むことができます。
過度な期待やプレッシャーを与えない
親御さんの期待は、時に子どもにとって大きなプレッシャーになることがあります。「勝たなければならない」というプレッシャーではなく、「楽しんで頑張ってほしい」という気持ちを伝えるように心がけてください。
親自身の姿勢:
親自身が学び続ける姿勢を持つ: 子どもの成長に合わせて、自主性の育て方や柔道に関する知識を学び続ける姿勢を持つことが大切です。
焦らず、子どものペースを見守る: 子どもの成長には個人差があります。焦らず、子どものペースに合わせて、じっくりと主体性が育まれるのを見守ってあげてください。
これらのことを意識していただくことで、子どもたちは安心して柔道に取り組み、自ら考え、行動する力を育んでいくことができるでしょう。親御さんの温かいサポートは、子どもたちの成長にとって何よりも大きな力となるはずです。
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